2011年5月に最終回を迎えた、「昭和の着物語り・今よみがえる90年前の色彩」では、栗谷家に伝わる大正から昭和初期の着物をご紹介いたしました。
引き続き、2011年7月より昭和40~50年代を中心に「昭和時代の着物」をご紹介して、はや1年が経過いたしました。
2012年7月からは、昨年ご紹介した帯には着物を、着物には帯を合わせてコーディネートした形でご覧頂きます。
神無月(10月)◆熊谷好博子作「竹・菊模様訪問着」に武田菱全通本袋帯
安部麗子(あき渋谷店店長)所蔵
残暑厳しき夏も過ぎ去って、空を仰ぐと、いつのまにか入道雲から鰯雲に変わり、季節の移ろいを感じさせられます。
日本の四季が文化や日本人の精神性に与える影響は計り知れないものがあります。
暑い時期がいつまでも続くのではなく、やがて涼しい秋が訪れ、そして冬へと気候の状況が変化するのです。
この「状況は変化する」という日本人に刻まれた認識は、人生、つらい時もあるが、必ず良い方向に向う時がくるのだと、人々に希望を与えます。
そして四季折々、その気候に合わせて着物を選ぶ心の豊かさを、一人でも多くの次の世代の若者に伝えるのが、着物に携わる人間の使命でありましょう。
今回ご紹介する「武田菱全通本袋帯」は昭和49年に、別の訪問着に合わせて購入いたしました。
この本袋帯は手機で袋状に織られていますので、両端に縫い目
はありません。
心を込めて織りあげた、やわらかな感触で、人の温もりが感じられます。
図柄は菱形4つを菱形に組み合わせてある四割菱の、甲斐・武田家の家紋です。
◆武田菱の本袋帯です。
30数年を経た今日でも、鮮やかな色彩を保っています。
◆たれ先から手先まで模様づけされている全通柄の帯です。
◆訪問着に帯を合わせたコーディネートです。
(2011年10月掲載の熊谷好博子作「竹・菊模様訪問着」のコメントは下方にあります。)
侘びた風情の水墨画の竹と季節の花、菊、帯締めの秋を表現する鹿模様で、10月の名残の茶会に相応しい装いになりました。
◆帯締めは、鹿紋有栖川錦の鹿を組んだ力作です。鹿は秋の季語でもあります。
この帯締めは天地があり、鹿が逆さまにならないよういつも気を使います。
◆後姿です。
☆2011年10月掲載の熊谷好博子作「竹・菊模様訪問着」のコメントはこちらから
☆11月は山下春径作「紅葉の小紋」に綴帯のコーディネートをご紹介します。
☆過去の「昭和の着物語り」はこちらから
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