『 昭和の着物語りー3 』
今回は、約80年後の平成の現在も着用させて頂いている、夏の着物をご紹介いたします。
由緒あるヴィンテージの着物を着ると、「自分は美術品を身に纏っているのだ」と、気が引き締まり、緊張感を持って大切に着用させて頂いております。
【能登上布】(上布:上等な麻の着物)
絹様着用、昭和初期のこの着物は越後上布だと思って、しばらくの間大切に着用させて頂いておりました。
その後洗い張りをして、仕立て直しましたところ、衿先の内側に「能登上布」と書かれた布が出てきて、そこで初めて新潟県の「越後上布」ではなく、石川県の能登上布であることが判明いたしました。
袖丈は詰めて仕立て直し、虫食いは、かけはぎをして修理してあります。
セミの羽のように薄い材質ですから、透けるので着付に工夫がいります。
麻の着物は、体が冷やされるような涼しい着心地です。
夏の素材として、麻を発見した先人は素晴らしいと敬服しています。
帯は現代の麻の帯でコーディネートしました。
【井桁の絽縮緬小紋】
流水に井桁模様の絽縮緬の小紋です。
東京の粋が感じられる、着やすい夏の着物です。
袖丈は詰めてあります。
【蜘蛛の巣柄・絽縮緬の小紋】
サイズから考えて、絹様のお母上様の着物かと思います。
日常的にお召しになっていたようで、衿は棒衿に仕立てられています。
袖丈は現代の標準寸法に詰めて着用させて頂いております。
藍色の絽縮緬に、手描きで蜘蛛の巣と、金泥の木の葉が描かれています。
蜘蛛の巣の線に作者の気迫が伝わって参ります。おはしょりで隠れる部分にも柄が描かれて、手を抜いていません。
贅沢な手描きの小紋です。
【レースの長襦袢】
上等なレースの長襦袢です。
綿ローンの細番手で織られた生地にレースが施されています。
「関東仕立て」になっているこの長襦袢は、洗練されたセンスが感じられます。
製作は松屋呉服店かと思いますが、レースの生地はフランス製ではないかと思われます。
昭和初期、このような上質なレースの長襦袢は、かなり高価であったと思います。
夏の透ける着物を通して、美しいレースの長襦袢がほのかに見えるなんて、なんとおしゃれな事でしょう。
【夏の半襟各種】
色鮮やかな竪絽の半襟です。手描き友禅で、繊細な日本刺繍が施されています。
下の麻の葉模様の半襟は未使用です。2点で七十銭、
販売元は、創業嘉永元年、
東京人形町・三河屋襟店と記されています。
大切な方の結婚式に思い切って使った、もう一枚の半襟は、繊細な絹糸で流水になでしこが織り出されています。
【絽刺しの額】
絽の白生地に、強く糊付けし、刺繍糸を刺して三つ鱗と般若の模様を表現しています。
こちらは額に入れてありました。
商売繁盛を祈願する左馬に、格子の奥はお祭りの提灯のようです。
【銀ブラの絹様】
下の写真は、「昭和14年7月13日銀座にて」と記されています。
左側が絹様です。パラソルと風呂敷包み、弟様のお子様の帽子を手にしています。
下の写真は、昭和15年6月22日です。6月でも、日差しが強かったのでしょう、日傘をさして、クラッチバックを抱えています。
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