安部麗子(あき渋谷店店長)所蔵
いにしえの歌人も和歌に詠んでいるように、様々な彩りの紅葉は私たちの目をも楽しませてくれます。
美しいものを見て、美しいと感じる心、それが日々の営みに力を与え、生活を豊かなものにするのではないでしょうか。
今回ご紹介する「紅葉の小紋」は昭和50年代後半に、付立染め作家「山下春径」先生に制作をお願いした着物です。
生地は4丈物で引き返し、柄は小紋の紅葉でとお願いしたのみで、地色や仕立も、全て先生にお任せいたしました。
約30年前に出来上がった着物は画像よりは明るい若草色で、一目で気に入りました。先生の優しいお人柄が反映されているかのような紅葉が1枚1枚バランス良く丁寧に描かれています。
この着物は毎年この時期に着用しておりますが、歳月とともに、色彩もやや渋くなって、着物も共に年輪を重ねてくれたようです。
この着物の価値は、手描きで引き返しなのに訪問着にせず、あえて小紋にしたところにあると考えます。
上前の部分です。
下前の部分です。
上前の引き返しの部分です。
見えにくいですが、上前の引き返しの部分に春径先生の落款(長方形の部分)があります。
右袖の後です。
中央は後身頃の部分です。おはしょりで隠れる部分まで、手抜きのない仕事です。
沢山の紅葉を手描きするのは、気の遠くなるような根気のいる作業でありましょう。
☆ 今回の掲載を機に、改めて先生の消息を調べさせて頂き、30年ぶりに先生とお話をすることが出来ました。
84歳になられた今日まで、お元気にて制作に打ち込まれているご様子、どうぞいつまでも健康にて、お仕事に御励みくださいますようにとお祈りいたしております。
【山下 春径のあゆみ】
昭和2年2月2日 東京に生まれる
昭和16年 第一生命に入社
昭和23年 同社退社
昭和35年 東京電力女子検針員第1号として入社
昭和50年 同社定年により退社
その頃、川合玉堂先生を師とした興津漁春先生に「付立画」を習う。
その後、付立画を染めに変える「付立染」を独自に考案し、紙から布地に
描き始める。
昭和57年 新宿柿傳ギャラリーにて、第1回山下 春径個展。茶道の小森松庵先生ご推薦にて。
昭和58年 西武デパート池袋本店にて、第2回山下 春径個展を開催。
少しずつ「付立染」を広げていこうと、銀座 文藝春秋画廊、新宿高野ギャラリー、東京交通会館、赤坂小川ギャラリー他各所にて展示会を開催中。
平成19・20年 東京都美術館 文化交流の会に出品
現在10人の生徒と共に日々作品を描く毎日を送っています。
☆12月は、総匹田絞りの着物をご紹介の予定です。
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