昭和42年制作 安部麗子(あき渋谷店店長)所蔵
待ちに待っていた本格的な春がようやく訪れました。
桜の開花とともにお花見や行楽へと、開放的で楽しみな季節でもあります。
また春は秋についで、結婚式やお茶会の多いシーズンです。
昼間の明るい太陽のもと、桜の下での野点も風情がありますが、ほのかに揺れる行灯の明かりに照らされた夜桜の下、桜の花びらが舞う池の上にしつらえた舞台での野点は、この世のものとは思えない幽玄な趣でした。
日頃の忙しさを忘れて、美しい日本に生まれて良かったと感じるひと時でした。
これからは春爛漫となり、様々な花々が咲き乱れます。その中でも牡丹は別格で、高貴な佇まいは私たちを魅了します。
今回ご紹介する「牡丹の訪問着」は、初めて私の寸法で制作した着物です。
牡丹だけの模様ですと、季節が限定されますので、梅、菊、紅葉、水仙などの模様を添えて、袷の季節を通して着用出来るようにいたしました。
後染めの着物は本来、オートクチュールです。
着る人のサイズに合わせて着物の模様を描き、白生地に下描きをして染め、刺繍、縫い取り、箔置きを施し仕立てをして完成します。
この着物の模様も、小柄な私の寸法に合わせて描いて頂きました。
全て伝統的な手作業によって作られた訪問着です。
☆糸目糊の跡が効果的な流水の模様です。糸目糊も最近はゴム糊に変わったようです。
☆上前の部分です。
☆繊細な日本刺繍と縫い取り、箔置きです。年を取ったら、朱色の牡丹を白い刺繍にし直して、地味目にする予定でしたが・・・・・・。
☆胸元です。
☆後袖です
☆後身頃から下前にかけての部分です。
☆一昔前の京都の着物には落款がないので、不思議に思っていました。
それは、それぞれの工程が誇りある職人の分業なので、あえて作家の名前は出さなかったようです。
☆日本の染織技術がしっかりと残っていた最後の時代に、時代を共有し、本物の着物に触れることが出来、着物を見る目が養われたのは幸運でした。
☆5月は二代目清次郎の石楠花の色留袖をご紹介いたします。
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