2011年5月に最終回を迎えた、「昭和の着物語り・今よみがえる90年前の色彩」では、栗谷家に伝わる大正から昭和初期の着物をご紹介いたしました。
引き続き、2011年7月より昭和40~50年代を中心に「昭和時代の着物」をご紹介して、はや1年が経過いたしました。
2012年7月からは、昨年ご紹介した帯には着物を、着物には帯を合わせてコーディネートした形でご覧頂きます。
【昭和の着物語りー季節の特集】
如月(二月)「梅の小紋」に熊谷好博子作「松の名古屋帯-昭和53年」
安部麗子(あき渋谷店店長)所蔵
ようやく暦の上では春を迎えましたが、本格的な春には、今しばらく時間がかかるようです。
しかし日脚は次第に伸びてきて、確実に次の季節の到来を告げてくれています。
春にさきがけて咲く梅の花は、白梅、紅梅も気高い佇まいで好きですが、蝋梅(ろうばい)の侘びた色彩にも心引かれます。
15年ほど前、クリスマスからお正月にかけて、パリからイタリア各地を友人と旅行しました。
ベネチア郊外は、昭和時代の日本の家並みと似ていて、生垣で囲まれた家が多く、辺りはみな1軒家でした。
私たちは夜霧の中をさまよい歩き、ようやく探しあてたレストランでは、スタッフたちが、遠来の客である私たちをあたたかく迎えてくれました。
そしてお店のカウンターの横に生けてある花は、紛れもなく蝋梅だったのです。
まさかイタリアで蝋梅に出会うとは想像もしていませんでした。
その上、ホテルに帰る途中の、ある家の玄関には、1本の満開の蝋梅の木がありました。
暗闇の中、花明かりでスポットライトを浴びたかのようなその存在感に、しばし感動して立ちすくんでしまったのです。
この光景はベネチアの「梅」の思い出として、瞼にしっかりと焼き付いています。
今月は、昨年ご紹介した「梅の小紋」に合わせて、熊谷好博子作「松の塩瀬名古屋帯」をご紹介いたします。(2012年2月掲載の「梅の小紋」のコメントは下方にあります。)
◆熊谷好博子先生に描いて頂いた、松模様のお太鼓柄の塩瀬名古屋帯です。
先生は、この帯を新年の仕事始めに制作して下さったそうです。
◆梅の小紋に松の帯を着装した姿です。
松と梅の取り合わせは、商家では語呂合わせで「商売(松梅)繁盛」にかけて、着物だけではなく、お茶のお道具などに 好んで用いられました。
この装いは、「日本のおしゃれ展」の会場でお目にかかった、着物研究家、池田重子先生に、ステキね!とお声をかけて頂い たコーディネートです。
◆バストアップです。
帯〆は黄土色の御嶽の手組です。
◆背面です。
伝統的な吉祥模様の松がダイナミックに描かれています。
☆2012年2月掲載「梅の小紋」はこちらから
☆来月は【東京染め紅型・蝶の小紋にしゃれ袋帯】をご紹介します。
☆過去の「昭和の着物語り」はこちらから
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